エンジンブレーキの仕組みと基本的なかけ方
バイクや車には、手や足で操作するブレーキのほかに、エンジンブレーキという減速方法があります。これは特別な装置がついているわけではなく、アクセルを戻した時にエンジンの回転数が落ちようとする抵抗力を利用して、タイヤの回転を抑える現象のことです。
アクセルを戻すだけで自然にかかりますが、より強い減速力を得たい場合は、ギアを低い段に落とす「シフトダウン」を行います。例えば、4速で走っている時にアクセルを戻すと緩やかに減速しますが、3速、2速とギアを落としていくと、エンジンが唸るような音と共にググッと強く後ろに引っ張られるような減速感を得られます。これがエンジンブレーキの効果です。
前輪ブレーキや後輪ブレーキは摩擦材を使ってタイヤを物理的に止めますが、エンジンブレーキはタイヤの回転そのものを内側から抑え込むイメージです。この二つのブレーキを適切に組み合わせることで、よりスムーズで安全な減速が可能になります。
長い下り坂ではエンジンブレーキが主役
エンジンブレーキが最も活躍するのは、峠道などの長い下り坂です。下り坂でスピードが出すぎてしまう時、前後のブレーキだけを使い続けていると、摩擦熱でブレーキが高温になりすぎて効きが悪くなる「フェード現象」や、ブレーキオイルが沸騰して全く効かなくなる「ベーパーロック現象」が起こる危険があります。
こうしたトラブルを防ぐために、下り坂ではあらかじめ低いギアを選び、エンジンブレーキを効かせながら降りるのが鉄則です。エンジンブレーキだけでスピードを抑えきれない時だけ、補助的に前後のブレーキを使うようにすれば、ブレーキパーツへの負担を大幅に減らすことができます。
また、エンジンブレーキを効かせている状態は、タイヤと路面のグリップ力が安定しやすい状態でもあります。下りカーブなどで車体が不安定になるのを防ぎ、安心して曲がっていくためにも、適切なギアを選んでエンジンブレーキを活用することが大切です。
信号での停止や微調整にも役立つテクニック
市街地走行でもエンジンブレーキは頻繁に使います。例えば、前方の信号が赤になったのが見えた時、すぐにブレーキレバーを握るのではなく、まずはアクセルを戻してエンジンブレーキで減速を始めます。そこから徐々にギアを落としていき、最後にブレーキを使って停止線で止まるようにすると、車体の前のめり(ノーズダイブ)が少なくなり、同乗者にも優しいスムーズな停止ができます。
また、カーブの手前で「ブレーキをかけるほどではないけれど、少しスピードを落としたい」という場面でもエンジンブレーキは有効です。アクセルの開け閉めだけで速度を微調整できるため、リズミカルに走ることができます。
ただし、急激なシフトダウンは強力なエンジンブレーキを生み出し、後輪がロックしてスリップする原因にもなります。シフトダウンする際は、エンジンの回転数を合わせるなど丁寧な操作を心がけるか、速度が十分に落ちてからギアを下げるようにしましょう。エンジンブレーキを無意識に使えるようになれば、ライディングのレベルが一段上がったと言えるでしょう。
